北奥耳鼻咽喉科
一般にめまいと呼ばれるものの原因は多種多様で、内耳性めまいの他に循環障害(高血圧、低血圧、不整脈、脳梗塞・出血)や脊髄小脳変性症などの中枢障害、心因性などもある。めまいの診断に欠かせないものは詳細な問診と眼振検査(眼球の動きをみる。前庭眼反射)である。眼振の観察は注視眼振(物体を見つめるときに出現する眼振)検査と、非注視下での頭位眼振検査や頭位変換眼振検査で行う。眼振検査が重要であるのは、前庭眼反射は他の前庭脊髄反射や前庭自律神経反射に比べて鋭敏なためである。
内耳性のめまいを起こす疾患には前庭神経炎、メニエール病、突発性難聴、薬物中毒、良性発作性頭位眩暈症、ハント症候群、中耳炎の波及による内耳炎などがある。
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幼少時に音に対する反応が悪かったり、言葉の出現が遅かったり明瞭でなかったりして難聴に気付くことがある。精査の結果、高度難聴の場合は人工内耳手術が行われる場合がある。両耳難聴に対しての教育は重要で、たとえ100dBの高度難聴であっても補聴器を使用して日常音や会話の存在を認識させて残存聴力を活用しながらなるべく早期から教育する。また、言葉の発育は正常であっても、幼児が電話を取って初めて一側性難聴に気付く場合もある。多くは原因不明であるが麻疹や流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)などが原因と考えられている。一側性難聴の場合は健常耳の健康管理に注意するほか、学校での席位置への配慮が必要である。
中高年の場合、加齢によって次第に難聴が出現するのは一般的である。難聴が40dBを超えるようであれば補聴器の使用を考慮する。一般に良聴耳に補聴器を装用する方が会話に役立つが、難聴が軽度で左右差がある場合は聞き取りが悪い方の耳に補聴器を装用する。
ちなみに、dBとは音の強さの単位で、純音聴力検査のdBは正常聴力を0dBとして音の強さを表現している。0〜15dBは正常範囲で、ささやき声が約40dB、普通会話が60〜70dB位である。
突然に起こる感音難聴のことで、朝起床時に気がつくことも多い。原因は不明であるが、ウイルス性や循環障害が考えられている。聴力障害の程度は様々で、めまいを伴うことも多い。500Hzより低い周波数の低音障害型でめまいのないものは低音障害型突発難聴として別に分類して研究されている。難聴についての障害部位は内耳の有毛細胞や血管条が想定されている。聴力障害が軽度なものでは治癒しやすいが、高度なものでは改善しにくいため高度難聴の場合は入院治療が勧められている。
単独での有効性が認められているのはステロイド(副腎皮質ホルモン)のみで、治療についてはステロイドを中心にして行う。代謝賦活剤やビタミンB群、血管拡張剤などを併用することが多い。高圧酸素療法(一酸化炭素中毒などの治療方法で、特殊な設備が必要)や星状神経節ブロック(頸部交感神経をブロックすることによって内頸動脈系を拡張させて、血流増加を図る。ちなみに内耳への血流は椎骨脳底動脈系で、左右の椎骨動脈が合流した脳底動脈から分枝した迷路動脈を経由して内耳へ血流は行く。)などもある。
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回転性めまいと難聴発作を繰り返す病気。めまいは初期には回転性であるが、病期が進むにつれて浮動感となる。難聴は当初の発作時には低音障害型で、病気の緩解期には正常近くまで回復する。メニエール病の発作を繰り返すことによって、難聴は次第に高音障害型や水平型となって、緩解期にも回復しづらくなる。両側性となる場合もある。
誘因として精神的・肉体的疲労や睡眠不足を訴える場合が多い。強大音はめまいを誘発する場合もある。
メニエール病は内耳疾患で、内耳で内リンパ水腫が起こっている。この内リンパ水腫の診断のために、めまいについてはフロセミドテスト、聴力についてはグリセロールテストや蝸電図検査が行われる。聴神経腫瘍など中枢性病変によっても同様のめまい・難聴発作が出現する場合があるので、MRIなどで鑑別する。
治療は一般には薬物療法が中心で、めまいや嘔吐を抑える事を目的とする。難聴についてステロイドホルモンを使用することもある。また、内リンパ水腫を軽減するために浸透圧利尿剤を用いることもある。その他の特殊な治療方法として、鼓膜を通じて薬液を鼓室(中耳)に注入する方法や、めまい発作が強い場合には内リンパ嚢手術や前庭神経切断術をすることもある。
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流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)による感音難聴。耳下腺腫脹に前後して急激に一側または両側の高度難聴になることがある。ムンプス難聴の確実例は腫脹の出現4日前より出現後18日以内に発症した急性高度難聴と定義されている。耳下腺炎の症状の軽重とは関係がない。ムンプス罹患者1万人のうち2人の発生率といわれる。一側性:両側性=30:1。ほとんどが高度難聴で回復はしないが、難聴が軽度や中等度のものでは回復する可能性がある。
球形嚢・卵形嚢の耳石の一部が剥がれて内耳内の他の部位へ移動したため、頭位を変化させるとその耳石が動いてめまいを起こすと考えられている。そのため、治療方法は剥がれて移動した耳石を元に戻すように頭位を変化させることによって行う。後半規管型や外側半規管型がある。
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図11延髄の外側部・小脳の下面部の梗塞(椎骨動脈や後下小脳動脈の梗塞)によっておこる。急に激しいめまい、嘔吐が起こるが、通常は難聴はない。同時に脳神経症状を伴うことが特徴で、同側の口蓋・咽頭・喉頭麻痺による嚥下障害・発語障害、小脳失調症、同側の顔面知覚麻痺、反対側の躯幹および四肢の知覚障害、同側のホルネル症候群(縮瞳、眼瞼下垂、顔面発汗障害)がみられる。
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図11::延髄外側症候群 |
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多くは難聴に伴って耳鳴を感じるようになるが、難聴を伴わない場合でも耳鳴を感じるときがある。また、本人が耳鳴を感じていなくてもその人の内耳から発せられた音が周囲の人に聞こえるような特殊な耳鳴もある。さらに、耳管周囲の痙攣を耳鳴と感じる場合や、血管音を耳鳴と感じる場合もある。血管音の場合は高血圧によって内頸動脈由来の音を感じている場合が多いが、耳周囲の腫瘍への栄養血管の音や脳動静脈奇形による血管音などもあり得る(中耳に突出したhemangiopericytomaの一例を図で呈示する)。
感音難聴によっておこる耳鳴の起源として、内耳性と中枢性が考えられる。内耳性は耳音響放射という検査で外有毛細胞の活動をとらえて、内耳起源の耳鳴の存在を示している。この場合、耳音響放射は聴力正常な領域でしか認められないので、耳鳴は聴力障害のある領域のすぐ傍の正常領域での反応ではないかと考えられている。中枢性は聴神経を切除しても耳鳴が消失しないことがあることからも存在は確実である。一般的な持続性の耳鳴はキシロカイン静脈注射で抑制できることからも中枢性で感じているのではないかと考えられ、機能性MRIからの研究では脳の前頭葉で感じているのではないかという説もある。
治療には各種があり、キシロカイン静注や精神安定剤、筋弛緩剤、ステロイドの鼓室内注入などが試されている。欧米ではTRT療法(適度な雑音を聞かせることによって耳鳴を抑制する)が試されているが、この方法は聴力が高度に障害されている場合には効果がない。
図12a:鼓膜越しに透見できる腫瘍 | 図12b:冠状断CT |
図12c:冠状断造影CT | 図12d:MRI |
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突然に顔の表情筋が動かなくなることがある。原因不明のものをベル麻痺と呼び、単純ヘルペスウイルスの再燃との関連が考えられている。ほとんどが一側性。原因が明らかなものに、ハント症候群や中耳炎によるもの、顔面神経鞘腫や耳下腺腫瘍によるものなどがある。
ベル麻痺の治療はステロイドの大量投与を中心に行う。重症であれば入院が望ましい。軽度のものは治癒しやすいが、重症(顔面運動が柳原法で40点満点中10点以下)では軽度のものに比べて治癒しにくい傾向がある。
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外耳道や耳介周囲の帯状疱疹、顔面神経麻痺、難聴やめまいの三つの症状を呈するものが典型的なハント症候群である。原因は免疫力の低下による水痘・帯状疱疹ウイルスの再燃で、治療はベル麻痺に準じたステロイドの大量投与と、抗ウイルス剤を併用する。 |
図13:帯状疱疹 なぜ海賊が形成された |
顔面痙攣とは顔面の表情筋に不随意な痙攣を起こす状態のことで、顔面神経の起始部が前下小脳動脈などと接触し、その部で神経が興奮することにより発症すると考えられている。顔面神経麻痺の後遺症として起こる場合もある。治療はボツリヌス毒素(神経筋接合部に作用し、筋麻痺を引き起こす)を注射する方法が良い。ただ、指定された講習を受けた医師が行う必要がある。重症であれば脳外科的手術(神経血管減圧術)も考慮する。
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腫瘍が小さいうちは一側性感音難聴で見つかることが多い。腫瘍が大きくなれば、めまいや頭痛なども出現してくる。腫瘍の起源は下前庭神経の場合が多い。診断はABR(聴性脳幹反応)やMRIで行う。特殊な場合は両側性に腫瘍を認めたり、脳や脊髄に腫瘍が多発することもある。治療は手術で、小さい場合は中頭蓋窩法、大きい場合は後頭蓋窩法が用いられる場合が多い。問題点は残存聴力の保存と顔面神経の保存である。また、ガンマナイフなどの放射線療法も試みられている。
図14a1:聴神経腫瘍 | 図14a2:聴神経腫瘍冠状断
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図14b:聴神経腫瘍 | |
図14c:聴神経腫瘍 | |
図14d:神経線維腫症U |
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空気中に漂う埃や花粉が鼻粘膜に付着して過敏症を引き起こす。くしゃみ発作、多量の水様鼻漏、鼻閉が主要な症状で、鼻根部や前額部の痛みなども起こりうる。症状が一年中あるものを通年性、花粉症のように花粉の飛ぶ期間だけ症状が出現するものを季節性と呼ぶ。鼻粘膜は蒼白浮腫状で、鼻汁中に好酸球を多数認める。花粉症ではアレルギー性結膜炎も出現しやすい。
通年性の抗原(アレルギーの原因)には家の埃やダニ、カビなどがある。季節性の抗原はスギやヒノキ(早春から春)が有名であるが、イネ科の雑草(カモガヤなど:初夏〜夏)やキク科の雑草(ブタクサなど:夏〜晩秋)なども多い。北海道ではシラカンバが春の花粉症の代表である。ペットを飼っている場合はペットが原因になっていることもあるし、リンゴやイチゴの花粉など農作業によるものもある。抗原の確定は血液検査(RAST)や皮膚反応で行う。
治療は日本アレルギー学会の鼻アレルギー診療ガイドライン(表1)に沿って行われる。抗アレルギー剤の内服や、抗アレルギー剤やステロイドの点鼻が基本であるが、鼻閉など症状の改善が困難な場合は手術による方法もある(下甲介粘膜切除術や同部位を電気凝固、レーザー焼灼やトリクロール酢酸で化学的に焼灼することなど)。減感作療法(特異的免疫療法)は抗原を薄めたものを少量から注射を開始して、一週間に1回から2回定期的に約6ヶ月かけて徐々に増量しながら皮内や皮下注射を繰り返していく治療方法で、そのあと維持療法を行う。それによって抗原に対する免疫力を高めると考えられている。ハウスダストアレルギーでは70%の人に症状の改善があるといわれている。スギ花粉症については以前の改善率は50%であったが、標準化スギ花粉エキスの使用によって改善率の向上が見込まれている。
なお、花粉症に合併して口腔アレルギー症候群がおこることがある。食物摂取後15分以内に口唇、口腔、咽頭の瘙痒感や浮腫が出現したり、下痢、腹痛、結膜充血、蕁麻疹、喘息などがおこる。花粉症に関連する食物としてメロン、スイカ、キーウィ、リンゴ、モモ、トマト、オレンジなどがある。
(表1)鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会:鼻アレルギー診療ガイドライン― 通年性鼻炎と花粉症―2002年版 . ライフ・サイエンス,東京, pp45,2002.
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急性副鼻腔炎が慢性化して、膿性鼻漏や鼻閉が持続した状態。多くの場合、各副鼻腔と鼻腔との連絡路の炎症の持続が慢性副鼻腔炎を引き起こす。保存的治療は鼻処置のほかにマクロライド半量投与と消炎酵素剤の長期内服が行われる。鼻茸が著明であったり保存的治療で効果がない場合は内視鏡下による副鼻腔手術(ESS)を行い、治癒に向かうきっかけを作って保存的治療を継続する。
図では正常者のCTの冠状断で、鼻腔と副鼻腔の関係を示す。
小児では鼻中隔前下方のキーゼルバッハ部位からの出血が多い。この部位は血管が豊富で、鼻を指でほじることによって出血を起こすことが多い。
成人では高血圧が誘因となっていることが多い。出血部位はキーゼルバッハ部位も多いが、下甲介後端付近(蝶口蓋動脈)や天蓋方向(前・後篩骨動脈)からの出血も多い。特に冬には出血量が多かったり、止血の困難な場合が多く、入院が必要になることもある。
止血には軟膏を塗ったガーゼを挿入して圧迫止血することが多い。鼻腔の前後の入り口で風船を膨らまして圧迫するものもある。高血圧など誘因があれば、それに対する対処も必要となる。
その他、出血傾向のある血液疾患(血小板減少症、白血病、血友病など)に注意をする。
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