2012年5月7日月曜日

SAW3


SAW3

SAW3

「SAW2」をDVDで鑑賞した後、あまりの面白さに感激し、翌日すぐさま劇場に向かい上映中の「SAW3」を見てしまった。

公開されてから3週間ほど経過しているにも拘らず、座席は満杯、この映画の人気の高さが伺える。

なかでも若い女性の客が目立っていた。

自分は意外に思った。

「SAW」は1ならともかく2以上の過激シーンが多いと噂されている、この3は女性向の映画だとは思えなかったからだ。

どうもこの女性客たちは「上質なサスペンス・スリラー」を期待しているんじゃないだろうか?

 

映画が開始してから自分の予想は間違っていなかったことに気づいた。

自分の隣の席に座っていた若い女性の2人連れが、映画の途中にも拘らず2人とも席を立ってしまったのだ。

スクリーンではまさに、「体中に鎖を埋め込まれ、肉ごと鎖を引きちぎって脱出しようとする男」が映し出されていた。

血と肉片を飛び散らせながら、爆弾が仕掛けられている部屋につなぎとめられた男は命がけで脱出しようとするが・・・・・・・・・

そう「SAW3」はソリッド・シチュエーション・スリラーなどという耳に新しいなにやら洒落た言葉で言い表せられる映画などではなかった。


なぜコマンチ国はPOW- WOW祝われている

これは極悪で残酷な拷問映画なのである。

 

前作で謎解きの要素などもはやこのシリーズの1部でしかなく、「SAW」シリーズの本質は想像を絶する拷問殺戮にあると気づいた監督ダーレン・リン・バウズマンは、謎解きやドラマは添え物的に扱い、おぞましい拷問による人体破壊に集中する覚悟を決めたのだった。

そのため異常な拷問器具の数々による殺害シーンには尋常ならざる気合が入っている。

冒頭の全身に鎖を埋め込まれた男から始まり、誘拐拉致した女性刑事を磔にし、胸部に鉄製の仕掛けをはめ込み、時間内に脱出しないと仕掛けが胸を左右に裂く、と脅す。

しかも脱出するには硫酸の入った瓶の中にある鍵を素手で取り出さないといけないのだ。

気違いじみたサディスティックな拷問に女性刑事は鉄の意思を見せて硫酸の中から鍵を取り出すのだが、しかし鍵は女性刑事を拘束している仕掛けには合わず、非常にも時間切れとなり女性刑事は胸を八つ裂きにされて死ぬ。

謎を解くか?強い意志によって仕掛けられた罠を克服し生き延びるか?

そうしたことは殺人鬼には一切関係ない。

とらわれた犠牲者には悪魔じみた拷問器具による無残なししか用意されていない。

まるで逃げ道があるように思わせておいて、その実最初から逃げ道など無いのだ。

これは監督、ダーレン・リン・バウズマンの意思でもある。

「謎解きなんか無い。あるのは拷問による殺戮だけだ」

 

 

 

 


スーフォールズhegge

子供をひき逃げで殺された男が拉致され、ジグソウのゲームに参加させられる。

拉致された建物の各部屋には拷問器具につながれた、かつて自分の息子のひき逃げに関わった人々がいる。

ジグソウは男に「彼らを許せるか?」と尋ねる。

これもジグソウの真意は一見「人間の中にある慈悲を試す」という深いものがありそうに見せておきながら、その実、殺される側、それを許さなくてはならない側の苦しみを楽しむだけの悪い冗談に過ぎない。

ジグソウはもはや芸術的な殺人以外に関心は無い。

息子のひき逃げを目撃しながら裁判で証言しなかった女。

ひき逃げ犯に軽い刑しか与えなかった判事。

そして息子をひき逃げし短い懲役を経て社会に復帰した男。

男は彼らが残酷な拷問器具によって殺されそうになっている場面に立ち会わされる。

しかし男は彼らを許そうとした。

どんなに恨みと怒りに駆られていても、最後まで人間性を失おうとはしなかった。

が・・・・・・・・・・・・・・・

ジグソウにとってはそんなことはなんの関係も無かった。

男は「許さなくてはいけない苦しみ」に苛まされていればいい。

そして拉致した人間は確実に殺す。

目撃証言をしなかった女性は全裸で鎖でつるされ冷凍庫に閉じ込められ投資させられる。

氷のオブジェのような裸体・・・・・・・・・・・これはまさに美しい彫刻を作るがごとくの芸術的な意味を持つ殺人

そして腐った豚をすり潰し、汚水に変えて穴の下に繋がれた判事に浴びせかける。


ウィチタフォールズ、テキサス州のイエローページ

権威の象徴である判事を侮辱の極地に叩き落すサディズムに満ちた拷問。

そしてラスト、「歯車」と名づけられた、もはや神々しいまでのおぞましき拷問器具。

まるで宗教画の中の「十字架に磔にされたキリスト」を思わせるほどの芸術的な作品だ。

背筋が凍るような恐ろしい拷問器具であるにも関わらず、あまりの芸術性に美しくさえ見えてしまうのが恐ろしい。

結局、ジグソウが求めていたのは、こうした芸術の想像とサディズムを満足させることでしかない。

それは監督ダーレン・リン・バウズマンも同じ気持ちだったに違いない。

彼が「SAW3」においてやりたかったことは「芸術的な拷問殺人映画」だったのだ。

素晴らしい!

「SAW3」は残酷スプラッター映画として、また新たな次元へと発展していったのだ。

 

こうした無慈悲なホラー映画に俺は感動してしまう。

「SAW3」はへたをするとホラーを芸術どころか神話的領域にまで高めてしまうものだ。

ラストにはお約束とばかりに「意外な真相」、「衝撃のどんでん返し」があるものの、そんなものは付け足しに過ぎない。

ただただ画面で繰り広げられる地獄の情景を思わせる拷問の数々こそが、この映画の全てである。

 

 他に目を奪われること無く拷問殺人映画として集中していれば大傑作となっただろう。

惜しむらくは、拷問殺戮の間に挟まれる主要登場人物の過去の回想シーンがたびたびはさまれて映画のテンポが鈍っているところだ。

回想シーンは必要なかった。


「SAW」という人気シリーズの裏側にある真相を語ることで、この物語のバックグラウンドに深みをもたらす意図があったのかもしれないが、そうしたものは必要なかった。

ただただ残酷な殺人絵巻であるべきだった。

映画で展開されるのは背景など存在しない「不条理で無慈悲な拷問」以上であるべきではなかったと思う。

 

それに目をそむけ劇場を立ち去るか、最後まで見届け前代未聞の殺人芸術に驚嘆するかは自分しだいなのである。

 

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